会社運営
Corporate Management
少数株主を甘くみてはいけない?!株式会社における少数株主権
我が国の株式会社のほとんどは非公開の同族会社です。同族会社とは、3人以下の株主等と特殊関係者が発行済株式の過半を保有する会社、非公開会社とは、株式を自由に譲渡できない旨を定款で定めている会社を指します。
株式1株ごとに平等に議決権があるため、株式会社の経営は多数決原理で決まります。
しかし、多数決原理を貫くと、過半数の議決権を有する支配株主が意のままに経営を行うことを止められません。会社利益が役員報酬や退職慰労金にばかり分配され、株主へ正当に還元されないケースも見受けられます。少数株主は、自由に株式を譲渡できないのに、配当も受けられないというジレンマを抱えがちです。
そこで、会社法は、会社の適切な経営や株主の利益を保護するために必要な一定の権利については、多数決原理を修正して、一定数以上の株式を保有していれば行使できることを定めています。これを少数株主権といい、これにより少数株主でも会社経営をチェックし、取締役の行為を監督することが可能となっています。
近年、株式の相続等を契機に、少数株主との間でトラブルを抱える会社が増えています。少数株主が行使できる権利を事前に把握し、それに備えましょう。以下、非公開同族会社で問題となりやすい少数株主権について紹介します。
会社内部書類の閲覧謄写請求
少数株主が会社運営状況を把握できるよう、会社法は、株主に対し様々な内部書類の閲覧や謄写の請求権を認めています。株主総会議事録、取締役会議事録、株主名簿、計算書類、会計帳簿などです。
いつ少数株主から書類の閲覧謄写を請求されるかわからないという気構えで、法令に沿った書類を作成・保管しておくことが大切です。
それぞれの書類により請求要件(必要な持株比率など)や拒絶要件、請求手続が法で決まっています。要件を満たした適法な閲覧謄写請求を受け、適法な拒絶事由がないのに会社が拒否してしまうと、株主から閲覧等を求める訴訟や仮処分を裁判所に申し立てられることがあります。
なお、書類の未作成を理由に、株主の閲覧請求を否定した裁判例もありますが、書類作成懈怠について取締役責任が別途追及されますし、過料の制裁を受けることもあるので要注意です。
業務財産検査役選任請求権
利用は少ないですが、議決権の3%以上の株式を有する株主には、業務財産検査役の選任申立権が認められています。業務執行に関し、不正行為や法令定款違反の重大事実があることを疑うに足りる事由がある場合に、裁判所に対し、会社の業務や財産の状況を調査する検査役の選任を申立てることができるというものです。
業務財産検査役は、中立的な弁護士が選任されることが通例です。検査役は、社内で必要な調査を行い、調査結果を裁判所に対して報告します。報酬は、最終的に会社負担となります。
一般的には少数株主が会社の業務や財産状況を正確に把握するために利用されますが、取締役が株主の立場で利用するケースも散見されます。多くは会社内部での支配権争いに伴うもので、例えばワンマン経営者による違法行為を他の取締役が把握する必要があるような場合です。
株主総会における少数株主権
株主総会は取締役が招集するのが原則ですが、会社法は、少数株主も、取締役に対して株主総会の招集を請求できるとしています。議決権の3%を保有する株主(非公開会社なら保有期間制限なし)であれば、招集請求が可能です。会社が応じない場合は、裁判所の許可を得て、株主が自ら株主総会を招集することもできます。
また、株主は、一定の要件のもとに、株主総会において議題や議案を提案でき、総会招集手続に関し検査役選任を申し立てることもできます。
取締役の行為の差止請求・取締役解任の訴え
取締役が法令定款違反等の行為をするおそれがあり、会社に著しい損害が生じるおそれがあるときは、株主(非公開会社なら保有期間制限なし)は当該取締役に対し行為をやめるよう請求することができます。監査役設置会社等の場合は、会社に回復不可能な損害が生じるおそれがあるときに限定されます。招集手続に瑕疵のある株主総会の招集差止めや善管注意義務違反の業務執行の差止めが典型です。
また、取締役等の役員の職務執行に関し、不正行為や重大な法令定款違反があったにもかかわらず、株主総会で役員解任が否決された等の場合、一定の少数株主は、当該株主総会から30日以内に、訴えをもって役員解任を請求できます。解任の訴え提起とともに、役員の職務執行停止・職務代行者選任の仮処分が申し立てられることが多く、これが認められると、中立的な弁護士が職務を代行することになります。
経営者としては、法令違反を行わないだけでなく、少数株主ときちんとコミュニケーションをとり、法令違反がないことを理解してもらう努力を怠らないことが重要です。
株主代表訴訟
株主代表訴訟とは、個々の株主が、株式会社の利益のために、会社の役員等に対して責任を追及する訴訟です。
役員の不正行為で会社が損害を被った場合、被害者である会社自体が役員責任を追及するのが原則ですが、支配株主側の役員への責任追及は放置されがちです。このため、株主の利益確保手段として株主代表訴訟が設けられました。
6か月前から引き続き株式を有する株主であれば、持ち株数が1株でも訴訟提起できます。
株主は、代表訴訟の提起前に、まず会社に対し、役員責任追及の訴えを提起するよう請求するのが原則です。提訴請求の日から60日以内に会社が訴え提起しない場合に株主代表訴訟提起が可能となります。提訴請求を受けた会社は、きちんと事実・法律関係調査を行い、訴え提起するか否か60日以内に決定することになります。
任務懈怠を疑われないよう経営するのはもちろんですが、万が一に備えて役員賠償責任保険(D&O保険)への加入も検討すべきでしょう。
少数株主からの株式買取も
他に、会社解散の訴え等の少数株主権もあります。少数株主を軽視せず、常に少数株主の目を意識した会社経営を心掛ける必要があります。
もちろん、少数株主から株式をすべて買い取れば問題は生じません。交渉で買取りできない場合は、スクイーズアウトや、相続人に対する売渡請求を検討することになるでしょう。
R7.11掲載
※掲載時点での法律を前提に、記事は作成されております。