契約・取引
Contracts & Transactions
譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律の制定
~動産や債権を担保とする制度が法律によりルールが明確化されました~
動産、債権担保の発展
従来企業の資金調達方法は、不動産担保あるいは個人保証に依存していましたが、不動産を有しない企業が増え、また保証人の負担を軽減するというのが時代の流れでもあり、これらに代わる担保として、機械設備や在庫商品といった動産、売掛債権などの債権が注目されてきておりました。そこで、動産や債権を担保として取り扱う制度として、「譲渡担保」「集合動産譲渡担保」「集合債権譲渡担保」「所有権留保」などが実務として発展してきました。
「譲渡担保」とは、債務者が機械設備や商品のような動産や債権を担保として債権者に移転するという担保手法のことをいいます。
「集合動産譲渡担保」とは、例えば「○○倉庫にある○○等の一切の在庫商品」といった具合に譲渡担保の対象を定め、現在あるものだけではなく、将来の仕入による在庫商品まで担保の対象とする方法です。
「集合債権譲渡担保」は、上記集合動産譲渡担保の債権バージョンで、例えば「○○との間の継続的な売買契約に基づき発生する売掛金請求権」というように債権の範囲を特定してそれを譲渡担保の対象とするものです。
「所有権留保」とは、売買等において、代金が完済されてはじめて売主から買主に所有権が移転することを合意するもので、買主に所有権が留保されるという制度です。
法律の成立
これらの制度は実務上発展し、定着していったものですが、そのルールを定める法律は実はありませんでした。
そこで、資金調達が円滑にできるように、法律でルールを明確化すべきということになり、2025年5月30日に「譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律」(以下では「譲渡担保法」といいます)が成立しました。施行されるのは少し先にはなりますが、中小企業の資金調達の重要なツールとなるはずですから、以下では法律で定められたルールの概要を見ていくことにしましょう。
譲渡担保契約の効力
(1) 譲渡担保権者(債権者)の権限
譲渡担保権者は、①動産や債権などの目的財産から、他の債権者に優先して弁済を受けることができること、②目的財産を売却した際の代金請求権や毀損した場合の保険金請求権などの権利からも優先して弁済を受けることができること、③優先弁済権の行使が妨害されている場合にその妨害の排除等を請求することができることが定められました。
(2) 譲渡担保権設定者(債務者)の権限
譲渡担保設定者は、①後順位の譲渡担保権の設定をすることも可能であること、②目的動産の使用や収益をすることが可能であること、③動産の使用収益が妨害されている場合は、その排除や目的動産の返還等を請求することができることが定められました。
(3) 根譲渡担保権に関する規律
担保される債権が特定されず、債権者と債務者との間で継続的に発生する多数の債権を一括して担保される債権とする譲渡担保を「根譲渡担保」というのですが、この根譲渡担保権に関する規律も定められました。
①根譲渡担保契約においては、極度額は定める必要がないこと、②根譲渡担保権の全部譲渡、一部譲渡、分割譲渡が認められ、登記制度も整備されること、③担保される債権がどうなれば確定するのかという事由を法律で明確化しております。
(4) 所有権留保契約
所有権留保については、動産譲渡担保契約と同様に扱うことや、買主側が民事再生手続開始の申立て等をしたことを解除事由とする特約の禁止などが定められています。
集合動産・集合債権を目的とする譲渡担保権
①集合動産の範囲は、種類に加え、所在場所等を指定することにより、集合債権の範囲は、債権の発生原因、発生時期等を指定することにより特定すること、②上記の指定された範囲に「設定後に含まれることになる動産」についても、担保権が及び対抗要件も具備されることになること、③設定者は、原則としてその指定範囲に含める動産の処分や債権の取り立てが可能であること、④設定者には、集合動産、集合債権全体の価値を維持する義務があることが定められました。
譲渡担保権と他の担保権の優劣関係
同じ財産に複数の担保権が競合した場合は、対抗要件を具備した時点の前後により担保権の順位が決まることが明示されました。対抗要件とは、自分が担保権を有していることを他の者に主張するための要件のことですが、不動産抵当権の登記を想起するとわかりやすいでしょう。動産や債権についても登記制度があるのですが、それ以外にも対抗要件があり、動産の場合は「引渡し」、債権の場合は「確定日付ある債務者に対する通知または承諾」といったものもあり、これらの前後関係で優劣が決まるというものです。
ところで、この原則については、二つの例外も規定されることになりました。
動産譲渡担保の対抗要件の「引渡し」には、設定者が引き続き目的物を占有するものの、これからは担保権者のために目的物を占有する合意をするという「占有改定」という方法があります。実務的にもよく使われているのですが、この占有改定がされているかどうかは外部の者からはよくわからないので、先に占有改定により譲渡担保を設定していても、後から譲渡担保の登記がされたときは、劣後するという例外が定められました。
また、例えば動産を買った買主が代金債務を担保するためにその動産に譲渡担保権を設定した場合のように、目的物である動産と牽連性のある金銭債務を担保する場合は、「引渡し」がなくても第三者に担保権を主張でき、他の担保権に優先するという例外も定められています。
実行に関する規律
譲渡担保法では、①譲渡担保権は裁判所の手続によらない実行(私的実行)ができること、②私的実行には、目的物の所有権を担保権者に帰属させてその評価額をもとに清算する帰属清算方式と目的物を第三者に譲渡して、その代金を優先弁済に充てて精算する処分精算方式があること、③競売など裁判所の手続でも実行ができることを規定しております。
その他にも譲渡担保権の倒産手続における取り扱いも規定されています。
R7.9掲載
※掲載時点での法律を前提に、記事は作成されております。