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改正景品表示法で導入された「確約手続」とは?
確約手続の導入
改正景品表示法が2024年10月に施行され、「確約手続」制度があらたに導入されました。
確約手続とは、簡単にいうと、景表法違反行為が疑われる事業者が、是正のための計画を申請し、消費者庁がその計画を認定すれば、措置命令や課徴金納付命令といった行政処分をしないというものです。違反の「疑い」段階であっても、事業者が自主的に改善や是正を行うよう促す目的で導入されました。
消費者庁としては、景表法違反を明確に認定する必要はなく、違反の「疑いがある」行為を認定すれば足りるため、従前より活発な取り締まりが可能になると見込まれています。
2025年2月には、さっそく、パーソナルジムの入会金を特定期間に限り値引きするとした宣伝について、ジムの運営会社に対して確約手続が初適用されました。今後、この手続が積極的に用いられると予想されていますので、特にBtoC取引に携わっている企業は、この機会に制度についてよく確認しておきましょう。
確約手続の流れ
確約手続の流れは次のようなものです。
- まず消費者庁が景表法違反の疑われる行為について調査開始
- 消費者庁が確約手続が相当だと判断した場合、確約手続通知を事業者に対して発出
- 確約手続通知を受け取った事業者は、確約手続を利用するかどうかを判断
- 確約手続の利用を選択した場合、事業者は、認定基準を念頭に置きながら、是正計画(確約計画)を作成し、申請
- 消費者庁は、基準に適合すると判断した場合、確約認定を行い、その旨を公表
- 事業者は、確約計画を履行し、その履行状況を消費者庁に報告
- 履行完了すれば、消費者庁は措置命令や課徴金納付命令を行うことなく、事案終了
もっとも、実際には、1の調査段階において、消費者庁から事業者へ問い合わせ等が行われることが通例です。したがって、事業者としては、1段階から確約手続の利用を検討し、確約手続で解決したいのか、それとも違反はないとして争うのかを判断していくことになると思われます。そして、確約手続で進めたいと判断した場合は、早い段階からその方針を消費者庁に伝え、働きかけていくことになるでしょう。
「確約手続に関する運用基準」(令和6年4月18日消費者庁官決定)の3項において、違反調査を受けている事業者は、確約手続通知前でも、いつでも、確約手続の対象となるかどうかを確認したり、確約手続を希望する旨を申し出るなどの相談を行うことができる、とされていることからも、早い段階からの方針すり合わせを消費者庁も予定しているとみることができます。
確約手続の対象
景品表示法4条にかかる景品規制への違反が疑われる行為や、同法5条で禁止している優良誤認、有利誤認その他の不当表示が疑われる行為のうち、個別具体的な事案ごとに、一般消費者の自主的合理的な取引選択を確保するうえで確約手続による問題解決が必要だと判断された場合に対象となります。
具体的には、疑われる行為に至った経緯やその規模・態様、一般消費者に与える影響の程度などの事情を考慮し、行政処分を待たず迅速に是正することが必要か、画一的な行政処分よりも、事業者の提案する是正方法によるほうが実態に即し効果的と考えられるか、といった観点で判断されることになります。
もっとも、1措置命令や課徴金納付命令に向けた弁明の機会付与の通知がなされた後は、確定手続に移行することはできないとされています。また、2過去10年以内に景表法に基づく措置命令を受けたことがある事業者や、3行為が悪質かつ重大な場合には、対象外となります。
確約計画に求められる内容
是正計画が消費者庁によって確約認定されるためには、1措置内容の十分性と、2措置実施の確実性の2点を満たすことが必要です。
前述の運用基準では、1措置内容の十分性に関しては、違反を疑われる行為を取りやめ、一般消費者に周知徹底することは当然に必要であるとし、さらに一般消費者への被害回復が計画されていればそれを重要な事情として考慮するとしています。また契約変更や取引条件変更なども有益な措置として考慮されるとしています。
次に、2措置実施の確実性として、再発防止措置が盛り込まれているかどうか、履行状況の報告体制などが考慮されるということです。
運用基準の書きぶりは抽象的でイメージがつかみにくく、どんな計画を立てれば確約認定されるのか見当もつかないと思われるかもしれません。たしかにそうですが、運用基準7項は、「消費者庁と事業者との間の意思疎通を密にすることは・・・双方にとって有益」とし、事業者から確約認定における論点等について説明を求められた際には、消費者庁は説明をすると明言しています。このことから、事業者は、消費者庁と緊密にコミュニケーションをとって事実上すり合わせを行い、確約認定の受けられる計画を立てていくことになるのだと思われます。
確約手続のメリット・デメリット
確約認定を受け、きちんと履行すれば、措置命令や課徴金納付命令といった処分を受けなくて済みます。景表法違反があったという認定ではなく、あくまで疑われる行為があったということを前提にしますので、違反事業者として公表されることによるレピュテーションリスクを回避することができます。むしろ、早期是正に応じたという姿勢を消費者から評価されることが期待されます。
他方で、確約手続の場合でも、計画が確約認定された段階でやはり事業者名が公表されます。確約手続に応じるということは、確定的な違反とまでは言えないものの、少なくともある程度改善すべき点があった、疑われてもやむを得ない行為があったと会社が認めたと消費者から捉えられてしまうかもしれません。その意味では企業イメージに傷がつく可能性はあります。
また、認定を受けるためにあまりに大きな負担を伴う計画を立ててしまうと、計画の履行が経営を圧迫する可能性もあります。消費者庁とのすり合わせに要する労力も見過ごせません。
景表法違反ではないという会社の言い分が通用するのかどうかを冷静に判断し、違反の有無をあいまいにした確約手続で進めるのか、それともきちんと弁明し潔白を訴えていくのかを早い段階から検討する必要があるでしょう。
R7.5掲載
※掲載時点での法律を前提に、記事は作成されております。